「……ごめんなさい……」
紘乃が涙を溜め、消え入る声で謝ったのだ。
キズナはいきなりの懺悔に言葉を失い、目を見開いたまま硬直していた。
「私、ずっと絆に謝りたかった。あの日、香奈ちゃんに脅されて、怖くて……絆を見捨てて逃げ出した」
紘乃の目に溢れている涙が頬を伝い、静かに流れ落ちていく。
「私の……私の弱さがあなたを殺した。許してなんて言えないのは分かってる。でも……」
紘乃は冷たいコンクリートに手をつき、ぺたんと座り込む。キズナは、そんな紘乃の姿をただ茫然と見下ろすことしか出来なかった。
「あの日から、あなたのことを考えなかった日は一度もなかった。何度もあなたを追って死のうと思ったの。だけど、死ねなくて……」
紘乃は震えながら顔を手の中にうずめた。その手首にたくさんの傷が見える。恐らく、何度も何度もカッターナイフを押しつけたのだろう。
それを目の当たりにしたキズナは、沸々と煮えたぎっていた憎しみが、蒸発するようにすぅっと体から抜けていくのを感じた。
――私は何を勘違いしていたんだろう。
確かにこの二年間、キズナは堪え難い苦しみの中に身を置いていた。
記憶のない不安な毎日。いつになったら"死神"を終える日が来るのかわからない恐怖。
そして、安らかな笑顔で次々と天に還ってゆく霊達を見送る虚しさ。
辛くて、天に還りたくて……自殺した自分を何度も憎んだ。
しかし……
そんな辛い毎日を送っていたのはキズナだけではなかった。紘乃も同じように苦しんできたのだ。
……相良を失ったソウマのように。
「紘乃……私、間違ってた」
キズナはゆっくりと屈み、座り込んでいる紘乃と目を合わせた。
「私たち、あんなに一緒にいたのに……どうして紘乃の本当の気持ち、わからなかったんだろう」
キズナの言葉に紘乃は目を見開いた。涙に溢れたその目が光を反射させ、キラキラ光っている。
「今、気付いた。私が死んだのは紘乃のせいじゃない。全部、私が弱かったから。紘乃の心を信じられなかった」
紘乃の目に、キズナの膝に落ちた水滴が映る。キズナの目から涙が零れ落ちたのだ。

