ソウマが完全に見えなくなった直後、キズナは再びツキが虚ろな目をしていることに気付いた。もう、一時間経ってしまっていたのだ。
「死神、約束の一時間が経った。お前の選択を聞こう」
神の言葉を聞いた途端、ソウマの言葉で消えかかっていた怒りの炎が再び激しく燃え上がってきた。あの忌々しい記憶が頭の中をよぎったからだ。
「何を迷う?」
ただ黙って俯くキズナに、神が静かに問いかけた。
「お前は、天に還ることを望んでいなかったのか?」
――……望んでいた。
今まで導いてきた霊達を天に見送るのが辛かった。羨ましくて仕方なかった。
転生できる彼らには、新しい未来が待ってる。希望も、夢も。
だけど、私は?
前に進むことも出来ず、生きている人間に囲まれて、自分の死を思い知らされるだけの毎日。
天に還り、救われたかった。
でも、今は……
「生きてる紘乃が許せない。私は、この怒りを忘れられない」
そう呟いたキズナの頭に、突如ソウマの笑顔がよぎった。
ソウマは、キズナが天に還る事を望み、全てを話してくれたのだ。思い出すのも辛いほど、残酷な過去を。
――ごめん、ソウマ。
キズナはぎゅっと目をつぶり、ソウマの顔をかき消した。
神はしばらくそんなキズナの葛藤を見ていたが、やがて悲しげな声を出した。
「……悪霊になるというのか? 何十もの彷徨える魂を説得し、天に導いてきたお前が?」
キズナはただ黙り、下を向いている。
すると、驚くことに神は目を閉じたかと思うと、甲高い声で叫んだ。ツキに戻ったのだ。
「キズナ!後ろ!!」
キズナが振り向くと、そこには息を切らした紘乃が立っていた。
おそらく、ずっとキズナを探して街を走り回っていたのだろう。大量の汗で髪までが濡れ、頬にくっついていた。
「……絆……」
紘乃が息も切れ切れに口を開いた。
"裏切り者"に名前を呼ばれたことで、キズナの怒りの炎が油を得たように激しく、大きく燃え出した。
――殺してやる。紘乃にも、私と同じ苦しみを……。
しかし、その瞬間……

