「キズナ、ソウマ! 聞いて聞いて! ソラったらね、前見ずに飛んでてビルのガラスに激突したんだよ!!」
ツキがケタケタ笑いながら、ソラの失態を暴露した。
「ツキ!」
ソラが物凄い形相でツキを睨み付け、逃げるツキを追いかけ回した。
「ソラは、時々ドジだよなぁ!」
ソウマは笑いながら、あちこちに飛び回る二匹の黒猫を見ていたが、急に真面目な顔になってキズナに向かって囁いた。
「確かに俺たちの仕事は辛い。人を殺めたり自殺した身でありながら、生きたがる霊を無理矢理天に還すんだから。……でもな、この仕事の本当の意味ってなんだと思う?」
「私は自殺したから、自分の命を奪った罰……だと思ってたけど」
キズナが顔をしかめながら言った。
「それもあるだろうな。でも、それだけじゃない。俺は最後に与えられたチャンスだと思うんだ。天に還り、新しく生まれ変わるための」
「……チャンス?」
「この仕事がなければ、自分が誰なのかも分からず彷徨い続けるだけ。でも、この仕事があるから、俺たちは霊と関わる中で、自分の痕跡を探すことが出来るんだよ。そして、お前はようやくチャンスを掴んだ」
キズナは、ソウマのその言葉が自分の心に大きな衝撃を与えたのを感じた。ソウマの言葉は、キズナの心に暖かい光を差し込んできたのだ。
今まで、そんな風に考えた事なんてなかった。
差し込んできた光が、少しずつキズナの心を照らしていく。
弘樹、癒芽、健、亜耶、優雅……そして、今まで導いてきたたくさんの霊達が、自分に痕跡を知るチャンスを与えてくれていたのだ。
もちろん、この仕事を与えてくれた神も。
……そう思った時、キズナの頬に涙が一筋流れた。
「何で迷ってるのか知らねぇけど、お前の選択は一つだと思うよ?」
ソウマはキズナに優しい笑顔を向け、軽く肩を叩いた。
そしてゆっくり立ち上がり、キズナの手を引いて立ち上がらせた後、飛び回っているツキとソラに向かって声を張り上げる。
「さて、ソラ! そろそろ行こうか!」
ソウマのその言葉を合図に、ツキとソラは追いかけっこを止め、それぞれの死神のもとへ戻ってきた。

