「怒りと悲しみが俺に刀を握らせた。主を殺し、俺も自害しようと思ったんだ。けど……主を殺す前に、俺は乱心者として周りにいた家臣どもに殺された」
ソウマの言葉に、キズナは耳を疑った。
「殺された……? 死神は罪を償うべき死に方をした人間がなるんじゃ……」
完全に混乱しているキズナの問いに、ソウマは力無く微笑みながら答える。
「ただ殺されただけなら、天に逝けただろうな。でも、俺は生前数え切れない程の人間を殺した……相良も含めて」
それでもわからないという顔をしているキズナに、ソウマが言葉を付け足した。
「五百年間死神を続けて……俺は気付いたんだ。死神は『殺し殺された人間』がなるものだという事に」
それを聞いたキズナは慌てて首を振った。
「そんなはずない。だって、私は自殺したのよ?」
「自殺もそれに含まれるだろ? 殺し、殺された事に変わりない」
ソウマはそう説明すると、再び悲しげな目をして、青白い月が浮かぶ空を見上げた。
「死神は命を奪い、奪われた罪人。還る事も許されず、失った記憶を探し続ける。そして、記憶を取り戻し、心から悔やむなら……神の慈悲で天に還れる。自分も命を奪われた被害者だから」
ソウマは袖でそっと目を拭い、話し続ける。
「記憶を戻せず、永久に死神から解放されない奴も多いよ。時が流れ、生きていた事さえ忘れられてな。だが、俺は幸いにも全てを思い出せた。でも……」
ソウマはもう涙は流していなかった。しかし、その目は失った友を思い、抜け殻のようだ。
「神に許されても、俺は自分が許せなかった。相良をこの手で殺した罪……天に逝って全てを忘れることなど、出来なかった」
「だから、死神として留まることを選んだの?」
「あぁ。この五百年間……そしてこれからも、俺は相良への罪を背負いながら死神として留まり続ける。永遠に」
ソウマが切なげに笑って言い終えた瞬間、上空から甲高い声が聞こえてきた。
「ただいまー!」
ツキとソラが仲良くもどり、それぞれついている死神の肩に乗った時には、ソウマはいつもの陽気な笑顔に戻っていた。
先ほど聞いた悲しい過去が嘘のように。

