「俺が死んだのは、もう五百年以上前の話だ。日本はまだ戦乱の世だった。俺の生前の名は勝俐走馬<スグリ ソウマ>。ある大名に仕え、戦の将として生きていた」
――ソウマが五百年も前の人間だったなんて知らなかった。まさか、そんなに長い間死神を続けていたなんて……。
信じられなかった。まだ二年しか死神をしていないキズナでさえ、何度この仕事に嫌気が差したかわからない。それを五百年も。
そんなキズナの驚きをよそに、ソウマは話を続ける。
「俺の隣には、いつも克己相良<カツミ サガラ>という男がいた。俺たちは主従の関係だった。……そんな風に考えたことなかったけどな。幼い頃からずっと一緒で、かけがえのない友だったから」
ソウマは目の前に懐かしい光景が広がっているかのように一点を見つめ、目を細めた。
「ある日、俺は仕えていた主に城に呼ばれ、庭に通された。そこには、縛り上げられ、地に伏せていた相良の姿があった。主の話によれば、相良は主を……そして勝俐家を裏切り、情報を敵国に売っていたらしい」
親友の裏切り。その話は、キズナに辛い過去を思い出させた。
しかし、あの日の紘乃の言葉を払うように首を振り、再びソウマの話に集中する。
「主は俺に相良を斬るように命じた。主従の縁は切れぬもの……従者の制裁はその主の役目だと」
ソウマはぎゅっと目をつぶり、震える声を絞り出した。
「俺は、相良の……無二の親友の首を……斬り落とした」
泣くまいと堪えていたのだろう。ソウマの口が異常に震えていた。しかし、その甲斐なく、虚しくも一粒の涙がこぼれ落ちた。
ソウマは、その涙を隠すように指を顔の前に組み、そこに顔を埋めた。
「けど、しばらくして相良は濡れ衣を着せられていた事がわかった。相良は裏切ってなどいなかったんだ。俺は信じてやれなかった。俺があいつの心を信じていたら、きっとあいつは……」
ソウマはそこで言葉を切ると、うずめた顔をゆっくりあげ、目に鋭い怒りを宿らせながら話を続けた。
「でも、主は相良の事など気にもしていなかった。後悔さえ。疑いを掛けられる奴が悪いと、それだけを言い放った」
ソウマの手が震えだした。憎しみからくる震えだろう。

