全てを思い出した今なら、はっきりと分かる。あれは……間違いなく紘乃だった。
しかし、肩まで掛かっていた髪は、やっと耳が隠れる程度まで短くなり、パーマを当てたようにウェーブしていた。
少し化粧もしていたのだろうか。高校の時よりも大人びて見えた気がする。
あの日から二年半もの年月が過ぎているのだから、容姿が変わっているのも当然だろう。
あの日のまま変わらないのは……キズナだけ。
その事実を改めた感じ取ったキズナの心に、虚しさと妬ましさが渦巻いた。
紘乃は自由に生きてる。キズナのように死に縛られずに。
……許せなかった。
もしもあの時、紘乃があんな言葉を浴びせなければ、絆は死ぬ事など無かった。絆の死の原因は、紘乃にあるのだ。
なのに……自分を見捨てて逃げた人間が、なぜ自分よりも幸せに生きている?
どうしても、紘乃には憎しみしか生まれてこない。理由は充分だった。
記憶がなかったあの時にはわからなかった優雅の気持ちが、今なら良くわかるような気がした。
裏切り者は許せない。それが自分と近い人間なら……なおさら。
――紘乃を呪い殺し、悪霊になって他の死神に消されるのも良いかもしれない。
そんな考えがキズナの頭をよぎったと同時に、キズナは嘲るようにふっと笑った。
同じ立場だった霊を無理矢理天に向かわせた当の自分が、悪霊になることを望むなんて。
でも……紘乃だけは、絶対に許さない。
そう思い、キズナが冷たい目で前を見据えながら一歩踏み出した。その時、後ろから朗らかな声が聞こえた。
「よぉ!最近よく会うなー!」
その声の主はソウマだった。ソウマは、いつものように満面の笑みでキズナに向かって歩いてくる。
ソウマの顔を見た途端、キズナの頭の中にあのゆったりした声が流れた。
『全てを思い出しても死神を続けている者もいる。お前の友人、ソウマもその一人だ』

