ゴロゴロゴロ。


お気に入りの、黄緑に大きな水色の水玉模様が入ったキャリーバッグが、コンクリートの上を不安定な様子で転がる。


『なんだ、この辺りはずいぶん田舎だなぁ』


パパが、スーツのポケットに両手を突っ込んで、眉を歪めた。


この人の中では、人通りが少ない所はすべて《田舎》だ。


もちろん、私もそう思っている。


『本当にこんな所でいいのか?由美』


パパは、その馬鹿でかい体を私に向けた。

私は、ニッコリ笑う。


『静かでいい所だわ』


空は、怖いくらいに青かった。


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