季節は、春。観月華恋はもうすぐ、憧れだった音城学園の生徒の一員になる。
うれしいなあ・・・。華恋は、そう思って音城学園に向かっていた。

新しい制服、新しい通学路。全てがキラキラと輝いて見える。そして、新しい学校で作る友達・・・、「恋」を見つけ出したかった。そんなことを夢見て半分スキップで歩いていると、左っかわの路地から突然人がでてきて跳ね飛ばされた。

「「うわっ!」」

目の前に星が散って、いつの間にか華恋は道路にへたりこんでいた。腰が痛い。人とぶつかったときに打ってしまったらしい。顔を上げると、ぶつかった人も同じように腰をさすっていた。
(あれ、音城学園の制服だ・・・)
華恋と同じ一年生か、それとも上級生かはわからなかったが、ともかく同じ学校だった。前髪がやけに長い男だ。ながーい前髪の奥に見える目が、華恋のことを見る。目が・・・見る・・・

「・・・ご、ごめんなさっっ」

(顔がぁ・・・顔がアあ~~!!コワイ・・・ッ)
ナイフのような切れ長の瞳。こっちを向いた表情からして・・・すでに、ヤンキーだった。華恋はびびりまくって搾り出すような声で謝ると、さっと立ち上がって逃げ出した。腰が痛いのなんて知るか。不良・・・コワイッ・・・!!

しばらく走って、後ろにあのヤンキーがいないことを確認して、華恋はほっとため息をついた。
(さすが高校。あんなヤンキーもいるんだ)

「お~い!!カレン~!!」
「・・・?あ、ユキッ!」
少し遠くに人影がみえる。それはだんだん大きくなって、彼女が知っている人物の形を作った。華恋の親友、江坂雪。小学校からの友達で、付き合いも長い。
「いいねぇ、カレン制服似合うよぉ♪」
「そ、そうかなぁ・・・?ユキも似合うよーっ!」
「ありがと。カレン、どした?」
二人は長い付き合いだったので、お互いのちょっとした異変でもすぐ分かる。今回も例外ではなかった。
「あのねー雪~!!さっき、こわいヤンキーと会っちゃった~!!」
「え~まじで~?」
「ほんと!!しかも、うちの学校らしい!!制服同じだし」
「あー、やっぱいるんだヤンキーって」
「でねっ、でねっ、そいつがすごい三白眼でさーっ・・・」