サアァー…サアァー…


また雨が降り出した。
この梅雨の時期には毎年当たり前の光景。

だけど、今年の梅雨は去年までと少し違う。

去年ほど、この時期が嫌じゃない。





………あいつ、傘持って出てきたかな?

まぁ、あいつは多少の雨なら傘をさしたくないとかいう位雨が好きな奴だしな。
傘がなくてもへっちゃらだろう。

それに……今日は雨が降ってくれて都合がいい。

なんとなく、俺達の思い出の日にはいつも雨が降ってるからな。

ポケットから、今日あいつを家に呼んだ『理由』を取り出す。

手のひらに収まる大きさの『その箱』をそっと開けて、中を確かめて一人でにやける。

こんなことをさっきから繰り返している俺は周りからみたら相当おかしい奴だろう。



でも、今日だけは仕方ないだろう?





ピンポーン!


鳴り響くチャイムの音。




あいつ、どんな反応するかな?

ま、とりあえずいつものように一緒に雨を眺めてから、だな。




もう絶対、お前を独りにしないから。
俺の気持ち、受け取ってくれるか………?



―完―