出血箇所のみに重力をかけて、止血代わりにする。

傷口を片手で押さえ、尚も猛攻を繰り出すルドルフから遠ざかろうとする私。

「どうした八王子棗!まだ理性崩壊の魔法は効いているだろう!闘争本能は萎えていない筈だ!反撃してみろ!さあ!」

叫びながら斬撃を見舞ってくるルドルフ。

その姿に余裕はない。

むしろ焦燥に駆られ、防戦一方の私以上に追い詰められているかのように思えた。

…かくいう私も、それほど体力に余裕はなかった。

先程の一撃で受けた傷から、出血が止まらない。

朦朧とする意識。

霞む視界。

グラヴィティコントローラーの制御が不安定になってくる。

「どうした!反撃しろ!俺を殺したいのだろう?そうだろう?」

まるでそう望んでいるかのように、私からの反撃を促すルドルフ。

「ルドルフ…」

消え入りそうな意識の中で、私はある仮定に行き着く。

「あんたまさか…本当は旧世界人を恨んでなんか…」