ルドルフの瞳に殺意の炎が灯る。

その瞬間、私の背中には凍てつくほどの戦慄が走った。

科学者稼業をやっていて、こんな眼差しを受ける事など絶対にないだろう。

人体実験でもして、数々の犠牲者を出しているようなマッドサイエンティストならともかく、私は世間に顔向けできないような非合法の研究などした事はない。

それ故に誰かに恨みを買った事などなく、憎悪や殺意の対象にされた経験など皆無だったのだ。

今この瞬間まで。

息を吸う事すら憚られるほどの、突き刺すような視線。

その視線に串刺しにされ、身動き一つ取れない。

そんな金縛りにも似た私を緊張から解放したのは。

「!」

国際科学研究所施設内に響き渡る非常ベルの音だった。