国際科学研究所。

名前からして堅苦しいこの研究所に、こんな広いラボを与えられているのは、世界最高峰の頭脳を持つ数人しかいない。

工学、化学、力学といった学問のスペシャリストのみが、この国際科学研究所の貴重な研究スペースを無償で提供される。

与えられる機材も助手も資金もトップクラス。

この施設で自らの研究に没頭できるというのは、それだけで超一流の証なのだ。

私も勿論その超一流の一人。

私の場合、その肩書きに『国際科学研究所最年少』というのが追加されるけど。

「八王子君」

休む事なく高速鍵打を続ける私の肩越しに、マグカップが差し出された。

「根を詰めるのは良くないな。少し一休みはどうかね?」

鼻孔をくすぐる芳しい香り。

私の好きな、インドネシアで収穫されるマンデリンコーヒーの香りだった。