向こう。

「んーっと……悪いんだけど…」

「えー、だめぇ?
あたし、そんな悪くないと思うんけだどなぁ?」

自分で言うか、普通。

「ね?いーじゃん!
付き合お?」

女が甘えるような声色を出すが、男は少しの反応もせずに答えた。

「悪いんだけど、あんた、誰?」

「…は?」

「だから、あんたの名前知らないんだよ。
同じ学年だったっけ?」

「…ふ、ふざけないでよ!
同じクラスの、本田麻理でしょ!」

本田は凄い剣幕で叫んだ。
だが男はそれをもろともせずに言った。

「あ、そうだっけ?」