向こう。

「ほら、無理すんなって。」

「…うるさい。
いいから行け…」

頑なに言い続ける俺を見て、舞瀬は俺を覗き込んだ。

「俺は大丈夫だから…行って。
お前に迷惑、掛けたく…ない。」

人に迷惑を掛けることだけは、したくない。
迷惑を掛ける位なら、一人の方が良い。

俺が泣きそうになり、俯くと舞瀬は手をぎゅっと握ってきた。

「迷惑なんかじゃない。
それよりも凪を一人にして、何かあったらそれこそ心配だ。」

真っ直ぐに俺を見つめる瞳は、嘘をついているものではなかった。