向こう。

藍姫はニコニコというか、ニヤニヤというか、そんな表情をしている。
舞瀬は全く気にせず、俺の肩を抱き寄せる。

「いいじゃねーか、恋人なんだから。」

「それ、なんか恥ずかしいんだけど…」

そんなことを言いながら抵抗しない俺は、少し変な気がする。

「…凪、疲れた?」

「ん…少し…?」

「もうこんな時間だからな。
長く話し過ぎたか。」

時計を見ると、針は十一時を過ぎていた。