向こう。

大変ね、とか、かわいそう、と言われることは何度もあった。
しかし一人暮らしをすることを偉いと言われたのは初めてだ。

嬉しいような、恥ずかしいような気分になる。
そんな思いを振り払いたくて、俺は他のことに意識を向けた。

「タオル持って来る。
階段上がってすぐ正面が俺の部屋だから、そこで待ってて。」

「分かった。」

俺はバスタオル数枚を手に、階段を上がった。
部屋に入ると、舞瀬は既に上半身の服を脱いでいた。

「あ、悪い。
床、濡らしたな。」

「いや、構わない。」

俺は持って来たバスタオルを渡した。
舞瀬は脱ぎ終わった上半身と頭を拭いている。