向こう。

「入って。」

「お邪魔しまーす。」

俺は家の鍵を開け、入るように促す。
当然、俺達の制服は全身水浸しだ。

「あれ、親御さんは出掛けてるのか?」

「…母さんは昔死んだ。
父は仕事で外国。」

あまり教えたくはなかったが、特に隠す理由もない。
なるべく声のトーンが暗くならないように話した。

「…そうなのか。
こんなデカい家に一人なんて…偉いな。」

偉い?
…そんなこと言われたの初めてだ。