向こう。

「ん…」

飛んでいた意識が、現実に戻って来た。
しかし目の前が真っ暗で、時間も場所も状況さえも掴めない。

ここは…?

「…起きたか。」

「…っ!?」

聞き覚えのない声がしたと同時に、口の中に何かが入れられる。
味のしない液体を押し込まれ、口を塞がれた。
後ろ手に縛られ、抵抗することも吐き出すことも出来ないこの状況では、液体を飲むしかない。

「んんっ………はっ…はぁ…」

無我夢中で液体を飲み込むと、ようやく口が自由になった。
俺はむせそうになるのをなんとか堪えて、声を出した。