向こう。

「あーっ!
分かった、分かった!
今から行くから!!」

どうやら相手に折れたらしい。
舞瀬は深く溜め息をついて携帯を切った。

「悪い…すぐ行かないといけなくなっちまった。
今日は先に帰ってくれないか?」

舞瀬は凄く残念そうだ。

「元々一緒に帰るつもりなんか無かったから別にいい。」

「…そうか。
じゃあまた明日な。」

舞瀬が悲しそうな顔で走って行くのを見て、俺は自分がついた醜態を激しく後悔した。

「…っ」

そんなこと微塵も思ってないのに。
何で素直になれなかったんだろう。

俺はただ、走り行く舞瀬の背中を見つめることしか出来なかった。