商店街の脇道を
特に会話もないままに進む。


だけど不思議なことに、
沈黙がそんなに苦痛じゃない自分に驚いた。


先生のゆっくりとした、
大きな間隔の靴音が心地いい。

さっきまで小走りじゃなくちゃ
先生のスピードに追いつけなかったけど
今は普通に歩けた。


私のスピードに
合わせてくれてるのかな・・・。


まさかね・・・。


学校の悪魔・魔王がそんなに優しいはずがない。


そんなことを思いながら歩いていたら。
いつの間にか
家の手前まで来てしまった。


(この角を曲がれば・・・
着いちゃうんだけどなぁ)


隣の先生を見上げると
不意に視線がぶつかってドキッとする。


「・・・なんだ?」


「いえ・・・あの、もうこの先うちなんですけど・・・」


そう言ったとき
後ろから聞き覚えのある声が
私たちの会話をさえぎった。



「あれ?エマちゃん・・・と・・・」


その声につられるように
先生と私は同時に振り返った。


「エ、エ、エマちゃんが・・・

エマちゃんが・・・

エマちゃんがイケメン連れてきたぁぁぁぁ!!!」



声の主は、先生と私を交互に指差して
猛ダッシュで角を曲がり
ご近所中に響き渡る大声で叫んだ。



「ち、ちが・・・ちょっと・・・マオちゃ・・・」


はっとして慌てて後を追いかけたけど
すでに時遅しとは、このことなんだろうな・・・。



「ぬぅわぁにぃぃぃぃぃ!!!」



数十メートル先の店先から
ビールジョッキを持ったままの人や
お箸くわえたままの人、
枝豆頬張った人


そして・・・


包丁を握り締めたお父さんと


泡の付いたお皿を手にしたお母さんが


勢揃いしていた・・・。