「いいから持ってろ。

お前に連絡付かないと俺が困る」


「何で困るんですか。

学校に行けば嫌でも会えます」


今度は先生に向き直らずに
ずんずん徒歩を進めながら
私なりの精一杯の嫌味を込めて答えた。


「嫌、別に俺も会いたくはないけど。

ただ担任でもない俺が

携帯のことで連絡があるとき

出向いてやったらおかしいだろ?

第一めんどくせーし」


ことごとく失礼な先生の言葉に
もう怒る気力さえ奪われて
ひとつため息をついた。


先生はタバコを手にとって
1本取り出したものの、
何かを思ったようにそのまま戻した。


(?禁煙でもするのかな?)


「まぁ・・・確かに毎日のように

先生に来られたり呼び出されたら、

私も迷惑です」



「ほぉう・・・俺に迷惑なんて言葉使うたぁ

ずいぶん度胸据わってんじゃん」


先生は言葉は穏やかじゃないけど
なんだかとても楽しそうに
ニヤリ、と笑って私の髪の毛を
ぐしゃぐしゃとかき混ぜ始めた。


「いやぁ!!やめてください~」


先生の腕から逃れようともがいていると


ふわり。


タバコの香りの中に
先生のイメージからは想像出来ない
爽やかで、甘い香りがして・・・。


また心臓が大きく脈を打った気がした。