理科準備室は
校舎の端にあり
実験などないかぎり、
ほとんど誰も近寄らない。


私ももちろんその一人。


こんな人気のないところ、
授業の時でも嫌なのに…。



大股でグングン進む
冴木先生。


背の高い先生は
一歩が大きいせいか、
どんどん先へと行ってしまう。


生徒が下校してしまった
雨降りの薄暗い廊下。


(こんな所に
一人にされるなんて
絶対嫌だ!)


私は小走りに
先を歩く先生の
なびく白衣を追いかけた。


結局先生は、
理科準備室に入るまで
一度も私を振り返ることはなかった。