ホテルの部屋で一人柴崎さんを待っていた

「遅いなー」

そういいながらベランダから下を覗き込んだ

夜風が心地いい

ふと下を見ると

人だかりができていて何かざわざわしている

!!

見ると圭矢と柴崎さんが殴りあっている

思わず目を疑った

でもそれは紛れもない事実で

その足は現場にむかって走りだしていた

人だかりを押しのけ見ると

血だらけの二人

「真奈美は渡さない」

倒れこんでいる圭矢がそう叫んだ

柴崎さんが落ちているビールを投げつけようとした

次の瞬間

私の背中に激痛が走った

「伊藤さん」

「真奈美?」

「もうやめて」

圭矢に抱きつきながら叫んで泣いていた

「伊藤さん…」

そんな私を見ていた柴崎さんが

「伊藤さんよかったじゃん」

といって切なそうに笑うと私の頭をぐしゃぐしゃとなでてそのまま去っていった

ごめんなさい柴崎さん。

私やっぱり圭矢じゃないと駄目みたい…

その後姿を見ながらそう心の中でつぶやいた


カラヤン広場のベンチでハンカチで圭矢の血を拭いた

「大丈夫?」

「痛い」




二人の間に沈黙がよぎる