父親が、仕事から帰ってきた。
引退してからは、普通の仕事に就き、働いていたのだ。
「父さん。」
「何だ?」
「話があるんだけど。」
「何の話だ?」
「俺、どうしても行きたい高校があるんだ。」
「高校ならもう行っているだろ?何を言ってるんだ。」
「その近くに大学もあるし、そこに行きたい。」
「どこの高校だ?」
「東京にある。」
「ふざけるな。ここは静岡だぞ?どうやって通うつもりだ?」
「下宿する。お金なら自分で働いて…」
「おまえ一人のバイト代で払えると思ってるのか?」
「それは…。でも、その高校は、結構優秀校だし、下宿して通ってる人もいる。」
「だめだ。」
「お願い、父さん。俺、その高校を出て、いい大学に入って、ちゃんと就職したいんだ。」
「…」
「心配かけないようにするから。」
「…勝手にしろ。」
「え?」
「その代わり、何かあっても知らないぞ。金も必ず返せ。」
「金?」
「金がいるだろう?貸してやるから必ず返せよ。」
「ありがとう。ありがとう、父さん。」
「お父さん、私もお兄ちゃんについて行ってもいい?」
「何を言っている。」
「お兄ちゃん一人じゃ何にも出来ないでしょ?だから私が手伝う。」
「それいいな。ね、いいでしょ?父さん。」
「美凪はだめだ。」
「どうして?私も行きたい。」
「何か遭ってからじゃ遅いんだぞ。」
「大丈夫。お兄ちゃんに守ってもらう。」
「ハァ。好きにしろ。」
「ありがとう。お父さん。」

俺たちは、東京に引っ越すことになった。