平日の動物園は、混んでなくてゆっくり見て回れた。
「おれねー、ライオン好き!
王さまなんだよ!すげーんだよー。」
岩の上に乗って遠くを眺めているライオンを指差し、興奮ぎみにぴょんぴょん跳ねる快斗くん。
可愛い。やっぱり子どもって無邪気で可愛い。
「あ、さるー!」
快斗くんはおサルさんの檻を見つけて走り出した。
と、その時…
ーーーーードンッ。
前を歩いていたお婆さんにぶつかった。
尻餅をついて転ぶ快斗くん。
そしてちょっとよろけるお婆さん。
慌てて私は駆け寄る…でも、その前にお兄ちゃんがひと足早くお婆さんを支えた。
「すみませんっ、大丈夫ですか?」
「あぁ、ごめんなさいねぇ。大丈夫よ。」
「突然ぶつかってきて、驚かれたんじゃないですか?ホントにすみません。」
すごく申し訳なさそうに心配するお兄ちゃんにお婆さんは優しく大丈夫だからと笑いかけてくれた。
「快斗、お婆さんにごめんなさいは?」
お兄ちゃんは珍しく怒った顔。
快斗くんは何となく泣きそうな顔で
ごめんなさいをした。
お婆さんは笑って、
「元気なことはいいことだからね。」って
優しく頭を撫でてから、向こうへ行ってしまった。
「快斗、急に走り出したら危ないだろ?」
「ん…だって、」
「だってじゃないだろ?お婆さん転んでケガしてたらどうする?」
「んー…だぁってぇ…(泣)」
怒るお兄ちゃんに耐えきれず、とうとうですね快斗くんは泣き出してしまった。
私はそっと抱き締めて、頭を撫でる。
「お兄ちゃん、そのへんにしとこ。
快斗くんも反省してるし。」
「ん。」
お兄ちゃんは私の顔を見て、気まずそうに笑うと…ジュースを買いにいった。
お兄ちゃん、怒ってるとこ見たの初めてかな。
いつもニコニコだから。
私も何だか怒られてる気分になっちゃった。
でも、ちゃんと駄目なことは駄目って教えなきゃだめだもんね。



