「いらっしゃいませ。
こちら、メニューでございます。」
ウェーブ男に合わせたように、カウンターからタイミングよくメニューを差し出してきた。
「ありがとうございます」
受け取ったメニューを斜め読みしながら、ちらっと店内を見渡す。
カウンターが、10席。
テーブル席が10席。
キャパは大体20席くらい。
カウンターの前一面に、4段の棚。
上の3段に、所狭しとお酒が並べられて。
下の1段には、綺麗に磨かれたグラスがある。
薄暗い照明に照らされたカウンターは、木目を感じられて。
このお店と共に刻まれてきた、少し細やかな傷も見れる。
――……素敵なお店。
あとは、お酒が美味しければ何もいう事ない…
隣からの篤い視線を、軽く無視しながら、カウンターに目を移した。
「ギムレットをお願いします。」
畏まりました、と、メニューを下げた男を目の端で追いながら、ウェーブ男の話に相槌を打った。

