六年一組、本紛失事件

「どれくらいだ?」

「六冊ほどです……」

「あんまり、集まっていないな。しかたない、漫画とか雑誌以外ならいいぞ」

「先生!」

 ここで木村が質問した。

「何だ?」

「漫画と雑誌以外っていうことは、どんな本
がありますか?」

「それは自分で考えろ」

「そうですね。考えま~す」

 あっさりと折れた木村であった。印象を悪くしないためだ。

 一時間目の授業は音楽なので、教科書と筆記具と縦笛を持って移動である。教室を最後に出たのは高蔵だった。