高基教諭は教壇に出席簿を置き、せき払いをし、右手にチョークを持って、黒板に自分の名前を書きはじめた。

『高基浩信』

 と、書いた。

「これが俺の名前だ!」

 今までやさしそうな顔が、急に生徒一人一人をにらんだ。

 笈滝はもうすでに涙目である。

 高基教諭は生徒の名前を出席簿順に読み始めた。

 名前を読み違えることなく、六年一組全員終わった。

「一人だけいないな。誰か、美田アリスの欠席の理由を知っている者はいないか?」