「みんな、いいか?」

 と、マイクを通して発声したのは波教頭だ。そのしゃがれた声はタバコの吸いすぎで、マイクを通すとガラガラで耳が痛く感じるほどである。短く刈られた頭髪は茶髪に染められて、ピンクのYシャツに紺パンツをはいている。ネクタイの色は紺であった。

 波教頭は目つきが鋭いので、小学生には威圧的だ。

 だから波教頭がいると、低学年の生徒は怖がって黙ってしまい、高学年の生徒はよく教師を怒鳴っているところを見ているので、直立不動になってしまうのだ。

 そんな怖いイメージの波教頭だが校長だけにはヘコヘコしている。

「校長先生、ありがたいお言葉を……」

 波教頭に言われて気分をよくした校長はマイクを持って全校生徒の前に現れた。