高基教諭はせわしなく、時計を何度も見た。危険と知りながらも藤美教諭と会うことは拒否できなかった。波教頭にさえ見つからなければ平気なはずだ。見つかったときの言い訳も考えておけば、大丈夫だろうと、高を括った。藤美教諭の魅力に翻弄されて、高基教諭は波教頭の威圧など屁とも思わなくなったのだ。

「まだ、五分か……」

 時間が経つのが長く感じた。待ち切れずに高基教諭は席を立った。

 用もないのに高基教諭はトイレに寄ったのだ。ちょうど手洗い場に田脳が手を水で注いでいた。

「いいところにいたな!」

 高基教諭が声をかけると、田脳はおびえて、体を強張らせた。

「な、何でしょ……」