「教頭先生」

 気まずい雰囲気を変えたのは藤美教諭だった。波教頭は急に、二コリと笑顔に変わった。

「何だね?」

「高基先生がクラシックのCDを聴きたいと言うものですから、さがしてあげていたんですよ」

 藤美教諭もニッコリと波教頭に笑顔で答えた。

「ほう、そうかい。高基君、ちょっと外してくれんかね」

 波教頭は高基教諭に顔を向けた瞬間は厳しい表情に変わっていた。

「はい……」

 高基教諭は波教頭の指示に従って、音楽室を退室した。冷や汗で額が濡れているのがわかったほどだ。