「あ、あの、邪魔したみたいなので……よ、用事は大したことではなので……」

 邪魔だとわかっているなら、黙って立ち去ればいいものをいつまでも突っ立ていては目障りだ。

 高基教諭は舌打ちをした。

「もしかして私に用事?」

 藤美教諭は右手の人差し指を自分に向け、おどけて見せた。

「は、はい、でも、誰でもいいです……」

 と、田脳は言い残し音楽室を出て行った。

「誰もいなくなりましたね」

 高基教諭は辺りを見回した。

「そうですね」

 藤美教諭はニッコリと笑顔をつくった。