生徒は黙ったままだった。しびれを切らし、子吉沢英夢が手を上げた。色白で長身である。服も水色の長袖シャツに黒のジーンズで、地味な感じである。

「なんだ?」

 と、高基教諭は聞き返した。

「遅れてくると、思います」

 と、子吉沢はきっぱりと言った。

「美田から聞いたのか?」

「いえ……」

「じゃ、なんだ?」

「いつもなんです……」

「ナニ! それじゃあ、遅刻の常習者か?」