「龍之助さん!」


息を切らしながら駆け寄る少女にはまだあどけなさが残る。


「美代さん!誰にも見つからなかったですか?」


「はい。お弁当を友達と食べてくると言ってきたので大丈夫です。」


そう言って彼女は僕の横に座ってお弁当を差し出した。


「ありがとう。」


僕は照れながらそれを受け取り仲良くふたりで分け合った。


「龍之助さん、私たちは結ばれない運命なのでしょうか・・・。違う、違う時代に生まれていたら・・・。そう思ってしまいます。」


「そうかもしれないですね・・・。きっと愛する人と結ばれる、そんな時代がくると思います。」


二人は寄り添い合いそうするしかできなかった。


美代さんはお嬢様で僕みたいなその辺の男では到底釣り合いが取れなかった。




こうして隠れて会い始めたのは1年前のこと。


彼女が道端で2人組の男に絡まれているところを助けたのがきっかけだった。


携帯電話もない時代、週に一回時間と場所を決めて会っている程度だった。



僕たちは切ない恋をしていた。