恋の種



電話を切り、携帯をベッドに投げつけた。



ほんとは少し期待してたんだ、里緒菜が心配して来てくれるんじゃないかって。


「ペットショップって…、どんだけ単純なんだよ…バカ里緒菜」



「ペットショップがどうかしたか?」




「隆司!!」


「ごめんな、インターホン鳴らしたんだけど応答ねぇから、勝手に上がった」



「さっき田中から電話来てさ…、隆司は知らねぇの?犬の話」


「犬?もしかして、昼休みか?俺、屋上行ってたからなあ…」


「なぁ…慶吾先輩って、里緒菜に気があんのかな」


「さぁ…、んなことより、里緒菜ちゃんと何かあったのか?」


「別に何も…」



「隠すなって、何かあったんだろ?じゃなきゃ里緒菜ちゃん、言う筈だろ?悠登が休んだ理由…、いつも一緒に来てんだからよ」



「………」


「今更、俺に隠さなくてもいいだろ?」






「…キス」


「キスって?」


「………」

「したのか?里緒菜ちゃんに」


俺は黙って頷く


「無理矢理?」


また頷く


「何でまた…」


「…ナンパした女と会った後、なんか虚しくなってさ…。里緒菜は呑気に先輩に食わせる弁当の味見しろとか言いやがるし…」




隆司は黙って俺の途切れ途切れの話を聞いてた。


…あんなにごちゃごちゃだった気持が、話すだけで整理されていく。