恋の種



「んで何で俺の部屋に来んだよっ」


「いいじゃん別に、悠登どうせ暇でしょ?」



里緒菜は俺のベッドにうつ伏せになりシレッと答える。


手には俺の大好きなアイス

…確か最後の一個だった



「勝手に人ん家の冷蔵庫開けんなって言ってんだろ。」

「冷蔵庫開けてないよっ、冷・凍・庫・開けたのっ」

「………」


アイスをとられた俺も可哀想だけど、もっとひどいのは…



…吉田


この炎天下の中、ずっと里緒菜の帰りを待っている。


「なぁ行かなくていいのかよ、喧嘩でもしたか?」


「喧嘩?うーん…ちょっとハズレ…。別れたし」




別れた?

全然ハズレじゃんっ…て、クイズかよっ




「…んで?今度は何?」

「え?」

「別れた理由だよっ」

「………」


「鼻毛か?鼻クソか?オナラか?」





「靴下…裏返しで履いてた」


「……」


「そのうち諦めて帰るよ」


「……………」




まさか隣の家に里緒菜がいるとも知らずに、この照りつける太陽の下、健気に待ち続ける吉田



その容姿もさることながら成績優秀、スポーツ万能、フッた女は数知れず…


ファンクラブまである吉田

その吉田を靴下ごときで捨てるなんて



(アーメン吉田…)




…ったく毎回毎回、里緒菜の小悪魔ぶりには、脱帽する。