森先生は航君に向き直った。 「なあ、そういうわけだから、航平(コウヘイ)、頼むよ」 先生は航君に何か頼んでるみたい。 私は、二人の会話を邪魔しないように、静かにハムスターのケージの方へ歩いていった。 「だから、もう嫌ですって。 俺は遺伝子の研究がしたくて生物部に入ったんです。 今年こそ自分のやりたいことをさせてもらいますから」 「そう言うなよー。 ちょっとデータ入力だけ、な?このとおり!」 森先生はパチンとおおげさに手を合わせて頭を下げた。