横断歩道を渡れば、向こうは駅だ。

目の前の信号は赤。

オレは大勢の人間の靴たちに囲まれて、一緒に青になるのを待った。


前にいる、“7:3”と言うよりは“10:0”と言っても大げさではない髪の分け方をしているオヤジの足が臭い。


時折、左から吹く風にその髪が吹かれ、頭上で弧を描き、反対側へふぁさりと垂れる。


もはや、洋服を着た落ち武者だ。


「にゃっ(ぶっ)」


あわてて髪を直すオヤジを見上げながら、

信号待ちの間、オレは何度も噴き出さずにはいられなかった。