ココでは僕が中心となって手術を行う。
僕の言う事に逆らう者は居ない。
今回の患者、山野南(ヤマノミナミ)、25歳。
この拡張型心筋症は40~50歳代に多く、中高年では男性に多い病気。
25歳でこの病に侵されるのは珍しい。
「器具の準備は大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
櫻井舞が答える。
患者に麻酔がかかったのを確認し、
「それではオペを始めます」
僕の言葉を合図に手術は始まった。
患者の胸部を茶色い消毒液で消毒する。
「メス」
素早く櫻井舞がメスを手渡す。
僕は患者の左胸にメスを入れる。
患者の茶色くなった肌に一筋の赤い線が入る。
そこに開創器という器具で切開した所を広げる。
すると白い肋骨が露になる。
今度は肋骨も開創器で押し広げる。
漸く山野南の心臓とご対面。



