人こそ芸術 part1


沸騰して暴れ始めた鍋の中に、パスタをねじって入れる。

銀色の鍋にヒマワリが咲く。

「天才だな」

我ながら上出来。

僕の中で満足感の風船が膨らむ。

「私も出来るよ」

栞はクスリと笑って言う。

その言葉の針は、たやすく僕の風船を割った。

勿論、僕の気分は風船の様にしぼむ。

「やだっ!冗談だよ!!」

僕の凹み具合をみて、野菜を切っていた栞は慌てて訂正する。

だが一度割れてしまった風船は二度と膨らまない。

「ごめんね?」

唇が軽く触れるキス。

いつもと立場が逆だ。

そんな事が何だか無性に可笑しくなった。

栞は鍋の隣でフライパンに火を掛ける。

オリーブオイルとニンニクの匂いが腹の虫を鳴らす。

玉ねぎ、シーフードミックス、ホールトマトの順に炒める。

「えっ!?それも入れるの?」

栞が手にしている物を見て驚いた。

飲む為に買ってきたと思っていたオレンジジュースを栞は入れようとしていたのだ。