オフィスに戻ると栞が心配した顔で扉の前に立っていた。

「お母さん何だって?」

「小山さんの無断欠勤のこと」

「それだけ?」

「僕らの関係も聞かれた」

「やっぱり・・・」

栞は俯いてしまった。

「大丈夫だよ」

僕は優しく微笑む。

栞の母親が僕らの関係を嗅ぎ付けたのは最近ではない。

付き合い始めた頃から、院長室に呼ばれては問い詰められた。

別に同僚の女性に口裏を合わせてもらって、彼女のフリをしてもらえばいいのだが、栞に反対されたので僕には彼女がいない事になっている。

だから度々、告白を受ける事があるのだ。

栞がモテないわけではない。

栞は病院側の誰もが知っているように、院長の娘。

誰も手を出さない。

だから栞が告白されるのは、若い患者やその見舞いに来る若い男。