地下室に下りるとガラスの向こうで、小山るうが右足首に付いた鎖を取ろうと力尽くで引っ張っていた。

「そんなことしても外れませんよ」

扉を開けながら華奢な背中に向かって言った。

「目黒先生・・・」

振り返った小山るうの顔は怒り、憎み、恨み、悲しみ、戸惑い、恐怖が入り混じっていた。

「何でこんなこと・・・」

小山るうは鎖から手を離し、立ち上がった。

「貴方が美しいからです」

小山るうがここに居る理由は美しいから。

ただそれだけ。

「・・・どこが?」

意外な質問だった。

「全部です」

即答で答えた。

細かい事を教えても意味は無い。

「んふふ・・・」

小山るうは不適に笑った。

「嬉しいです。先生が私の事をそんな風に思って下さってたなんて」

まるで恋人にするかように、歩み寄った僕を優しく抱き締めた。

「私、先生の事好きだったんですよ?知ってました?」

耳元で甘く囁き、僕の胸に顔を擦り付ける。

小山るうは僕を見上げると背伸びをして薄く形のいい唇を合わせた。

そして勝手に僕の舌と絡める。

完全に女を武器とする裏の小山るう。

美しいのは外見だけ・・・か。

おそらくこのまま性行為を求めて来るのだろう。

そして邪魔になる鎖を外した隙に逃げるつもりなんだ。

そんな単純に僕は騙されません。

第一、僕は栞しか抱かない。