人こそ芸術 part1


「…コレクション?」

大橋美鈴は目を細め小さな声で聞く。

「貴方は僕の8人目のコレクションに選ばれたんです」

僕は優しく微笑み、ゆっくりとした足取りで大橋美鈴に近づく。

当然大橋美鈴は死を直感し、美しい顔を恐怖に歪める。

尻を床に擦りながら後退りをした。

壁に背中をぶつけた大橋美鈴に手を伸ばす。

「いやああぁあぁぁーっ!!」

耳を塞ぎたくなる様な悲鳴が分厚い硝子に覆われた部屋に響く。

大橋美鈴は赤ん坊がするハイハイで、その場から逃げようと僕に背を向けた。

鎖が足首に付いているのだから、僕の手から逃れることは出来ない。

必死で前後に動く肩を力ずくで床に押さえつける。

肘あたりを僕の膝で踏み、大橋美鈴と僕の尻を合わせる様に馬乗りになる。

背中を覆う服を巻くり上げ、狙いを定め縫い針を差し込んだ。

ちょうど右肺に刺さる位置に…。

しばらく放置するので、背中から針を抜き、部屋を出た。

地上に上がりながら、右手の中指に白い糸でぶら下がる縫い針を見つめる。

針の穴付近の白い糸は赤い糸に変わっていた。

もう少ししたら茶色になるだろう。