ココに連れて来る女の右足首には鎖を付けている。
その鎖の先は床の中央に固定されている為、唯一の出入り口にはあと一歩のところで届かないのだ。
「慌てないでください」
「約束通り・・・早くちょうだいッ!!」
森岡静菜の声は悲鳴にも聞こえる。
「じゃぁココに置いておきますから。ゆっくり食べて下さい」
僕が言い終わる前に、床に置いたトレーに手を伸ばして無我夢中で食べ始めた。
あっという間に容器の中のお粥は無くなり、水も飲み干し間食した。
「ワァ、スゴイ」
その勢いに唖然として思わず口から出た感情の無い言葉。
「私をココから出して」
森岡静菜は手の甲で口元を拭い、僕を睨み付けた。
「それは出来ません」
僕は微笑んだ。
「何でよッ!私が何したって言うのよ!?」
森岡静菜は僕に飛びかかろうとするが、鎖が邪魔をする。
床に倒れても届かない僕の足を掴もうと、森岡静菜は右手で空気を引っ掻く。
その姿はまるで日本のホラー映画の様だ。
「早く私をココから出してっ」
食事を終えた森岡静菜は元気を取り戻し、同じ事を繰り返し言っている。
「それは出来ません。・・・貴方がココに居る理由は、静菜さん、貴方が美しいからです」
僕はニッコリ微笑んだ。



