既に栞はマンションを出て、外で待っていた。
車を栞の前に停め、車から降りる。
「5分遅刻だぞっ」
そう言った栞の顔は笑っていた。
「ゴメン。やや渋滞って感じでさ」
俺は苦笑いをする。
「許さないぃ」
頬を膨らませ、拗ねたフリ。
「ゴメンってば」
そう言って栞の腰を抱き、唇を合わせる。
今日みたいに遅刻をすると決まって拗ねたフリをする。
そして僕は決まってキスをする。
こうすると許してくれるのだ。
実際には拗ねていないのだが…。
そんなどこか子供っぽい栞が愛らしくてたまらない。
「美味しいお店見つけたから今日は案内するね」
笑顔でそう言うと、栞は勝手に助手席に座った。
「案内って言うから、てっきり運転してくれるんだと思った」
運転席に乗り込んで含み笑いで言う。
「助手席で案内しますから。タイ料理なんだ」
栞は嬉しそうに目を輝かせて言う。
よほどその店の料理が美味しいんだろう。