「体調はいかがですか?」

僕が病室に入った時と同じ台詞。

大橋美鈴は大きな目を細めて僕を睨む。

「私が何したって言うんですか!?」

「別に何も」

笑わずに言う。

「じゃぁ何で・・・」

僕はその質問に答えない。

来た道を戻る。

呼び止められたが、振り向きもしなかった。



一階にあるキッチンへ向かう。

大橋美鈴の声を録音させてもらったので食事を用意することにした。

何にしようか。

何なら食べれるか。

何が好きか。

患者さんには病院食。



地下室に下りて硝子張りの部屋に入る。

寝そべり天井を眺める大橋美鈴は顔だけを此方に向けた。

「食事ですよ」

優しく微笑む。

看護婦たちはいつもこうやって食事を運んでいるのだろうか。

「ここに置いておきますから。毒なんて入ってませんから食べて下さいね」

唇の両端を上げて微笑む。

「嘘つき」

大橋美鈴の言葉に僕の微笑みは停止する。

「本当です。でも食べたくないなら強制はしません。けど・・・」

一度言葉を止める。

「餓死しますよ」

僕の顔に笑みが戻る。