大橋美鈴をおぶり監視カメラの死角を通って病院を出て、車に乗せる。

何故行きも帰りも警備員に会わなかったか判った。

一升瓶を抱えて眠っていたのだ。

今日のところは、その無責任な仕事っぷりに感謝する。

看護婦達も何か無い限り、ナースステーションからは出ない。

真夜中の病院は怖いから。

こうして大橋美鈴を地下室に招待することが出来た。

大橋美鈴が目を覚ましたので、声を録音し、病院の近くにある公衆電話で早朝、病院に電話をした。

『別の病院に行くので私のことは探さないで下さい。目黒先生にはお世話になりましたと伝えてください』

僕が考えた台詞を大橋美鈴に言わせ、携帯電話で録音した。

僕の名前が入っているが、もし警察が絡んできても、感謝の言葉を述べているので警戒される事はあるまい。

電話したあとは家に戻り、珈琲を飲む暇も無く病院へ向かった。

焦り驚く目黒先生を演じた。

俳優になれるかもしれないと思い、唇がつり上がる。

ゆっくりとL字の取っ手を握る。