この地下室は剥き出しの白いコンクリートで壁、床、天井が覆われている。

この冷たい地下室の幾つかあるうちの一つ、その部屋の扉を開ける。

そこには1人の女が恐怖に怯え、部屋の隅で膝を抱いている。

僕の存在に気付いたのか女は顔を上げた。

「話す気になりましたか?」

2日ほど前にココに連れて来て以来、女は食べ物を口にしていない。

水さえも・・・その所為か女は力無く首を横に振った。

「困りましたね。名前を教えてくれれば食事を与えると言っているのに・・・」

女は僕をじっと見詰めている。

「話す気が無いなら今夜も食事は抜きですね」

そう言って僕は女に背を向ける。

「待って・・・」

僕を呼び止める声は、耳を澄まさないと聞き逃してしまうほど、小さなものだった。

「どうしました?話す気になりましたか?」

僕は出来るだけ優しく微笑んだ。

「私の名前は森岡静菜(モリオカシズナ)・・・」

僕は黙って頷く。

「よくできました」

僕は食事の準備の為、地下室を出た。