その無邪気な笑顔の向こうに、邪気を。


その善意だといわんばかりの笑顔の裏に、悪意を。


征がそれとはわからないように笑顔を浮べれば浮べるほど、それを痛切に感じ、それが敵意の粒となって、あられのようにオレの上に降り注ぐ。


そんな征に、どんな言葉を返そうか躊躇した時、


「だから、はい。
コレ、凌にあげる」


楽しそうな征の声が響いた。


オレが遥にプレゼントした“あのネックレスと指輪”を指の先でつまんで揺らす征が、


ソレをオレに“返す”のではなく“あげる”


そう表現したことに、


“あぁ…。
この笑顔は、むしろ、わざとか…”


ようやく―――…気づいた。