急いで自宅へ戻り娘に電話をかけてもつながる様子はなかった。何度か目には電話はつながる事なく切られるようになった。

 仕方なく仕事で遅いお父さんへ電話をかけるけれど、つながる様子がなかったので留守電へと伝言を残した。

 不安に時計を見ながら時間だけが過ぎていった。

 しばらくすると電話がかかってきた。

「絵里奈!もう怒らないから早く帰ってきなさい!」

「おい、落ち着けよ」

 その声はお父さん…つまり旦那の声だった。

「お父さん、どうしよう…あの娘いかにもガラの悪そうな車に乗って出て行ったの!」

「だから落ち着けって、大丈夫だろ、絵里奈ももう16になったんだから、そのうち帰って来るさ」

「でも、何かあったらって思うと…」

「そうやってお前が締め付けるから絵里奈も反発するんだろ」

「だからって!」

「ああ、今日はちょっと遅くなるけど帰るから、お前は先に寝てろ」

「…今日ぐらい早く帰って来てもいいじゃない」

「…じゃあ切るぞ」

 そう言い電話はきれてしまった。静かな部屋には時計の秒針を刻む音だけが響いていた。